わたしがキミをどれだけ、…かということ。 | Sadistic Erotomania

わたしがキミをどれだけ、…かということ。

わたしは、箸の持ち方が非常に悪い。



もちろん、ちゃんと正しい持ち方を教えられましたとも!!!

小学生の頃は両親にガミガミ注意されるから、ご飯が嫌いになったこともあるし、
「まず鉛筆を持つように」と言われても、そもそも鉛筆の持ち方も悪いし、
当然矯正箸も使ったし、
それでも長年染み付いた指の形を変えると、指が痛くて痛くて、
弟に至っては本気で泣きながら切れたことがあるくらい痛くて、
だから、両親には姉弟揃って諦められ、
中学にあがる頃には、もう注意もされなくなったよ。

たまにお酒の席で『お箸の持ち方が1番悪い奴は誰か大会』になっても、恥ずかしくなーい。

だって、ご飯食べられるしー。
別に困らないしー。
皆さんが正しいと思っている持ち方が、わたしには正しくなかっただけだしー。
わたしにはわたしの持ち方が正しいだけだしー。


それはそれは、もう開き直り以外の何物でもないくらい、開き直っていた。



しかし、だ。




『中谷さん、お箸の持ち方悪いんだね。家で教えてもらえなかったの?』




心臓がギュワッとなった。



「そりゃあ…教えてもらたけど…でもー!でも持てないの!」

『そう?持てると思うよ。きちんと持てないと恥ずかしいよ』



知ってる。
ちゃんと持てないと恥ずかしいことなんて、知ってる。

でも、わたし自身が恥ずかしい思いをするより、

お箸の持ち方も正しくて、魚も綺麗に食べて、お米一粒も残さないでご飯を食べるキミが。
キミがわたしとご飯を一緒に食べて、そのせいで不快な思いをするほうが、ずっとずっと嫌だと思った。

キミから「今日は何食べる?」って聞かれなくなるなんて、そんなのは嫌だと思った。



典型的なバッテン箸。
交差した箸で、バッテンを狭めてモノを掴む持ち方。

何度も指がつった。
そのくらい癖は強くて、そのたびフォークとスプーンがあるんだからいんじゃね?って思った。


『そ、そんなに指辛いの?!なんで?!』

ドン引きされた。


2週間もしたら指の筋肉が引きつることはなくなったけど、細い箸と箸でモノを掴むということが難しくてたまらなかった。
箸と箸の距離感がわからない。
今までは距離感なんてわからなくても、箸の間を狭めればモノが勝手に掴めたんだもの。


『その調子だ!箸をコントロールするんだ!こうだよ、こう!』

調子乗らないでください。(逆切れ)



だけど、1ヶ月もしたらきちんと持てるようになった。
22年間、誰に言われても直せなかった、直す気がなかった箸の持ち方が、


キミと一緒に楽しくご飯を食べたいがために、正しくなりました。


それがどういうことか、わたしにとってどれだけのことか、キミにはわかるかしら。






あれから1年以上経って、今はバッテン箸をするほうが難しい。


いつか『俺のこと、どのくらい好き?』って聞いてくれればいいのに。
万に一つもなさそうな可能性だけれども、せっかくだからそういう台詞も言ってくれてもいいのに。


そしたら、「箸の持ち方を直すくらい、好きよ」って言ってあげるのに。


それで、『その程度!?え、箸て!?』ってショックを受けてくれれば最高に可愛いのになあ。